みりんは、かつて飲みものだった?

おいしいものの、その先へ

おいしいものの、その先へ。|食材探究コラム

照り焼きのつや、煮物のやさしい甘み。料理の仕上がりをそっと支える本みりんは、いまや家庭の定番調味料です。ところが、その歴史をたどると、かつては甘い酒として楽しまれていた時代に出会います。台所の調味料棚から、少し昔の日本へ。みりんの意外な物語をひもといてみましょう。

01|はじまりは、甘い酒だった

みりんの起源には、室町期の甘い酒「練酒」に由来する説や、中国から伝わった甘い酒に由来する説などがあります。正確な起源は一つに定まっていません。

江戸時代には、甘い酒として親しまれる一方、料理にも少しずつ使われるようになりました。いまの私たちが煮魚に加える調味料にも、「飲む楽しみ」から「調理する楽しみ」へと変わってきた歴史があるのです。

江戸の人々にとって、甘い酒はぜいたくな楽しみの一つでした。砂糖が今ほど身近ではなかった時代、酒由来の甘い飲みものには独特の魅力があったのでしょう。現代では「調味料」という印象が強いみりんですが、歴史のなかでは異なる顔を持っていたのです。

02|もち米と米麹、焼酎から生まれる甘さ

一般的な本みりんは、蒸したもち米、米麹、焼酎やアルコールなどを原料に造られます。米麹の酵素がもち米のでんぷんを糖へ分解し、ゆっくりと甘みが生まれます。

砂糖を水に溶かした甘さとは異なり、糖類やアミノ酸などが重なった、ふくらみのある味わいが特徴です。糖化・熟成を経た原料を搾り、澄んだ黄金色の液体へ仕上げていきます。

本みりんの製造では、酵母を加えてアルコール発酵させる一般的な清酒造りとは異なり、焼酎やアルコールの存在する環境で、米麹の酵素によって糖化と熟成が進むのが特徴です。甘みのもとが生まれる仕組みに、米の加工技術の奥深さがあります。

03|「本みりん」は酒類という意外な事実

本みりんは酒税法上の酒類です。アルコールを含むため、みりん風調味料とは原料や製法、表示上の扱いが異なります。売り場で似た名前が並んでいても、同じものではありません。

みりん風調味料はアルコール分が低いなどの特徴があり、食塩を加えたみりんタイプの発酵調味料もあります。料理に求める風味や用途によって選ぶとよいでしょう。

本みりんのアルコール分は通常およそ14%前後で、酒類として扱われます。料理に使う際は加熱や調理法に配慮が必要で、アルコールに注意が必要な人の料理では、用途に合う代替品を選ぶことも大切です。名前が似ていても違いを知ったうえで使いたいものです。

04|照り、香り、煮崩れを支える働き

本みりんが料理で重宝されるのは、甘みだけが理由ではありません。料理につやを与え、風味をまとめ、素材の臭みを和らげるなど、さまざまな調理効果があります。

たとえば照り焼きでは、しょうゆの塩味を丸くしながら、見た目にもおいしそうなつやを添えます。煮物で使うときは、入れる順序や加熱の仕方でも印象が変わります。

「照り」が生まれるのは、糖類などが素材の表面に働くため。砂糖だけで甘みをつける場合とは仕上がりの印象が変わります。ただし、みりんが万能というわけではありません。素材や料理に合わせて酒や砂糖と使い分けることが、家庭料理の工夫になります。

05|いつもの料理で、風味の違いを発見

まずは、しょうゆと本みりんを合わせたシンプルなたれを少量作ってみてください。甘さの質や香りの広がりがわかりやすくなります。

甘い調味料だからといって、多く入れる必要はありません。料理のなかで役割を知り、適量を使うこと。その小さな工夫が、仕上がりを上品に整えてくれます。

本みりんを選ぶときは、原材料や製造方法、色の違いを比べてみると面白いでしょう。熟成の進んだ色合いの濃い製品もあり、同じ呼び名でも幅があります。調味料の背景を知って選ぶことは、暮らしの小さなぜいたくかもしれません。

結び|おいしいものの、その先へ。

料理の照りの奥には、かつて人々が杯で楽しんだ甘い酒の記憶が残っています。本みりんを知ると、何げなく注ぐひとさじが、少しだけ特別に感じられるかもしれません。


参考資料

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